アニメーション制作会社。スタジオポノック最新作『屋根裏のラジャー』BD/DVD/4K UHD発売決定!『メアリと魔女の花』以来、6年ぶりとなる全世界待望の長編アニメーション映画。

国際オリンピック委員会&スタジオポノック
共同映画制作発表全文

オリンピック文化遺産財団ディレクター
フランシス・ガベ氏
スタジオポノック ファウンダー&プロデューサー 西村義明氏

 

――まず自己紹介をお願いします。

ガベ氏:非常に有能なスタジオポノックの皆さまとご一緒でき非常に嬉しく思います。
私ですけれどもオリンピック文化遺産財団ディレクターのガベと申します。
こちらの方でもすでに16年勤務しておりまして、前職はメディア関係の仕事に従事しておりました。
私どものオリンピック文化遺産財団(OFCH)ですが、こちらはIOCのひとつの部署でして、主にIOCの活動として遺産、文化、教育といった面を担当しております。
こちらのOFCHの活動は4つの柱がございます。まず1つ目に遺産の管理、資料の管理。こちらの方はイメージですとか、ビデオ、芸術作品の管理をしております。
そして2つ目の柱は、オリンピックスタディセンターというものがございまして、主に研究目的としたオリンピックムーブメントを教育分野とリンクさせる関連づけるような役割を担っています。
そして3つ目はローザンヌにあるオリンピック博物館を管理しております。
こちらの方はぜひ皆さまに一度見ていただきたいのです。ドライブがてら寄っていただくには非常に便利がよいところです。オリンピック博物館は、ミュージアムではありますが、全世界で30あるミュージアムのネットワークのトップ機関としても機能しています。
そしてその最後の4つ目の柱については、国際プログラム部門というものがありまして、主に文化、教育などを推進しているところなのですが、教育プログラムは世界で2000万人の子どもたちに影響を与えるような活動を行ってまいりました。
またその一貫として今回のアニメーションもそうなのですが、取り組みの中で、新しい概観と言いますか、新しいものを提供していると考えています。そしてもうひとつの文化のところですが、開催地の組織委員会と一緒に文化を考慮した興味深いプログラムを策定して実施しています。
最後のところでは、公式記録映画やアートポスターなども制作しておりまして、芸術作品をつくっているということを行っています。
西村氏:こんにちは、スタジオポノックのファウンダーとプロデューサーをしている西村義明と申します。私たちは日本の東京をベースにスタジオで手書きアニメーションに特化したアニメーションスタジオです。2015年に設立しまして、「メアリと魔女の花」という長編アニメーションを作ったあとに、今回アヌシー(国際アニメーション映画祭)に持ってきたのは、短編アニメーションのアンソロジー「ちいさな英雄―カニとタマゴと透明人間―」という作品です。
今回、ガベさんそしてIOC、国際オリンピック委員会の方々からこういうオファーを受けてとても光栄に思っています。今日はよろしくお願いいたします。

 

――今回、オリンピックをテーマにしたアニメーションを制作することにいたった経緯をお知らせください。

ガベ氏:まず、アートと文化というもの、起源は古代ギリシャにまで遡りまして、古代ギリシャのその古代オリンピックでも大切な考えとされていました。
そして近代オリンピックの父であるクーベルタン男爵ですけれども、彼もオリンピックを定礎した時に、文学ですとか絵とか文化の要素を大切にしておりました。
こちらの経緯としましては5年~6年前のことなのですが、IOCバッハ会長より、このプログラムに関して新しい概観を与えたいという提案がございまして、プログラムの内容としても芸術公式記録映画等にも新鮮味を与えたいということでした。
河瀬直美監督やアートポスターなどで世界的に有名なアーティストのほかのプロジェクトを動かしているのですが、こういった試みということはオリンピックの毎回オリンピック開催ごとに行われており、たとえば、リオでは、フランス人のJRという写真家、他の大会ではレオナルド・ディッシュ。こういった方々を起用させていただいております。絵画や、彫刻や世界でもトップレベルにある方々と共同制作をさせていただいておりますが、アニメーションに関しましては、日本というとアニメーション、その中でもトップレベルにある、スタジオポノックと共に組ませていただければ非常に面白いのではないか、ということで実践しました。

 

――スタジオポノックの印象をお話ください。

ガベ氏:大きな理由としては3つあります。ひとつめは、今までの作品を成功させている、扱ったテーマを成功に導いているという事実。非常にアートでは大切なことで、多くの観客を感動させる、多くの観客に響くものを作る。そういったものを作るセレモニーなどでもたくさんの観客に見せるということは非常に大切だと考えています。
そして幅広い観客に向けて作っているにも関わらず、アプローチの仕方が良い意味でクラシックの伝統を重んじている、尊敬している、その要素がとてもよいと思ったわけです。
この多くの人々に届くように、そしてその伝統を古きよきものを大切にするというこの2つを大切にするということはとても難しいと思っています。
また3つめは、この企画を実践するにあたり、ポノックとの話し合いの場を持たせてもらいその時に非常に価値観が似ているという印象を受けました。
先ほどご覧になった「ちいさな英雄」ですが、スポーツのシーンが出てきますが自分の最善をつくして周りの人に感謝をしている、というような価値観、同じ価値観を持って仕事が出来るということは非常に大切だと思いました。

 

――今回のオファーを受けて意気込みを。

西村氏:まさか僕たちがアニメーション映画でオリンピック、或いはオリンピズムを描くことになろうとは考えてもみませんでした。2020年に東京オリンピックが来るなあ、というぐらいに考えていたところ、昨年の夏ぐらいにオファーをいただき、スタジオにお越しいただいた際に、手描きアニメーションの特性というものと、僕たちがその時に思い描いていたオリンピックというものが像を結ばなかったのです。
手書きアニメーションというのは、筋肉とか肌感とかこういうものを描くのはあまり適していない部分もものによってはあったりする。オリンピックという祭典とか競技というものを描くのであれば、実写の方がふさわしいのではないかと思っていたのです。最初お聞きした時は少し躊躇したのですが、お話を伺ううちに、彼らがやりたいというオリンピズムを表すアニメーションというのはまったく違うのだということがわかりました。
彼らがやりたいのは、第一にオリンピズムを若い方々に知って欲しいということ。僕たちのスタジオポノックというスタジオは、手描きアニメーションを通して子どもを中心に、そして子どもたちの親が一緒になって、色々な方々に見ていただくというアニメーションを志しているので、子どもとか、若い方々とか聞くとつい、やりたいなと思ってしまうんですね。なので、まず、子どもたちに見せたいのだと強くいわれたこと。
第二に彼らが思い描いていたオリンピズムというのは、僕たちが子どもたちに伝えたい、と思っているのと、ガベさんが仰っていましたがとても近しいところにあるのではないかと思ったので、ちょっと、、、荷が重い仕事だな、(笑)。世界のオリンピックですからね。荷が重い仕事ではありますけれども、一晩考えて、よし、やろう。と決意した次第です。

 

――スタッフ構成は決まっているのか

西村氏:スタッフ構成は徐々に決めているところです。監督は今日は諸般の事情でお伝えできないのですが、オリンピズムを表すアニメーションに僕らが信頼するふさわしい作品を作る監督を中心にスタッフィングをしています。

 

――アニメの制作過程をご覧になっているかと思いますが、IOCとしての注文はあるか。

ガベ氏:アニメアーティストはポノックなので全信頼を寄せており、
何が大切かということのは私たちが精神の部分で同じものを共有しているか、ということが大切だと思います。
ポノックのこれまでの作品や、芸術性の高い作品を見せていただいておりますので、それに関しては全面的に任せております。また今回制作するアニメーション映画ですが、オリンピズムに基づいたものですし、東京2020大会の際に上映されるわけですが、内容としてはオリンピック精神や哲学を扱ったものなので、タイムレスなものなのです。東京2020大会に限ったものではなく、世界的なイベントで子どもたちの心に残るものを作りたい、それをミッションに取り組んでいます。

 

――コンセプトとして子どもたちに伝えるということですが、作品をつくるにあたってこだわりたい点、メッセージは。

西村氏:最初は、東京オリンピックのために作るのかな、と思ったのですが、そうじゃない、ということをお聞きして、東京オリンピックでも上映するけれども今後行われるパリや今後の開催地で必ず上映され、これはアートプロジェクトだとお聞きしたときに、ひとつのメッセージなんだという僕たちが短編映画を作るときは今この時、この瞬間に子どもたちに伝えたいものを考えていくということが中心になるのですが、特に100年も、100年以上も続く作品をつくってほしいというのが彼らの注文だったんですね。それはすごく難しいですし、最初に聞いたときにオリンピズムって何かわからなかったんです。
オリンピズムってなんだろうって。それはたぶんお客さんも同じですよね。オリンピズムを知っている人はそれほど多くはない。だとすれば皆さんが思い描いたオリンピックがアスリートの競技、競争、祭典かもしれないけれども、オリンピックの祭典というのはもうひとつのある光景を見せてくれている、競争の末に僕たちにオリンピックは何を見せてくれるんだろうか、そう思ったときに、それを描けばよいのか、と。競争の末に世界は色々な競争が繰り広げられていますけれど、僕たちは子どもたちにどんな世界を見せていきたいのか、それをひとつの柱にしながら、それがアニメーションのテーマになると思います。

 

――ガベ氏から西村氏へ期待すること。

ガベ氏:多くの期待をしています。大きな冒険をする際に期待値を高くしているわけでして、アート作品をつくるうえで、私たちの夢、ミッションであるもの、長年多くの子どもに感動を与える作品を残したいということです。そこが夢であり期待であるということです。
はじめにプロジェクトを提案してあとは最善を尽くすのみということです。

 

――オリンピズムの精神、多くの子どもたちにわかりやすいように、噛み砕いたテーマ設定はあるのでしょうか。

西村氏:僕たちは子どもたちに見せるときに、わかりやすくするつもりはあまりなくて、少し脇道に反れますが、「サムライエッグ」というたまごアレルギーを題材にした映画を作っているときに、大人たちがここがわからなかった、というところを子どもたちはすごく敏感に「あれ、絶対にタマゴはいっているよ!」という風に会場で騒ぐんですね。子どもは難しくてわからないものもありますが、何かを感じとってしまう。論理的に話を組みたてることは長編でも必ずやることではあるのですが、短編アニメーションだからこそ彼らに感じてもらうということが出来たらいいなという、現状、ストーリーボード、絵コンテを作りながら広げていく作業を作りながら、広げすぎると曖昧になってしまうし、狭めすぎると何かを表したようで何も表していないのではないかという、僕らがオリンピズムのアニメーションを描く、且つオリンピズムがあるからこれなんだね、という風な納得ができるようなことがあれば、僕はまず第一には何か達成できていくと思います。そして次には子どもたちがまず感じてくれて、ただ、良いメッセージだなということではなく、オリンピック楽しみだなという風に思ってくれるようなそういう短い作品ができたら幸せだなと思います。